すすむべき道に

兄は大阪に行くことになった。

局が地元にはなく、地元には事務所

しか、ないからだそうだ。

 

中学になって、手伝いが少なく

なったのは、機械が増えたのと、

兄が、その機械で平日は、田畑の

整地などをしてくれていたから

だったのです。

 

兄が、家を出ていくことは、

父が、今住んでいる近くにある

田んぼを売った理由の一つだった

のかも知れません。

 

「これからは私が、手伝うから。」

と、父に伝えたのですが、

父は、何も言いませんでした。

 

N君は、卒業式の後、引っ越して

行きました。

私に、引っ越し先の住所が書かれた

紙を残して。

 

父の弟が、住む所が無いと言って

引っ越してきて、倉庫に住んでいた。

手狭になったので、家を建てたいから

倉庫を倒して良いかと言ってきた。

 

つまり、土地を分けてくれと言うこと

らしい、祖母にも頼まれ為か、父は

弟に、土地を譲った。

 

田畑が売れたお金も、兄弟で分けた。

叔母さんの、家のこともあるから、

父のすることに、文句を言うわけでは

無いが、叔父さんが母を気にもかけて

いないことが気になった。

 

兄は家を出て行ったが、田植えや

稲刈りのときは、休暇願いを出して、

手伝いに帰ってきた。

 

私は、自転車で高校に通いだした。

 

 

 

 

 

はじめまして、さようなら。

数日前から、知らない男の人が

家の中にいる。

昨日は、お兄ちゃんと竹の飛行機を

作っていた。

 

私は、触らせてもらえなかったが、

組み立てるのも、紙を張るのも

凄く、器用に出来上がった。

 

兄は、それを持って友達と

飛ばしに行った。

 

母に誰かを聞くと、

「父の弟で、大工さんをしていて、

 今まで、県外で働いていたけど、

 体調をくずし、帰ってきた。」

と、言われた。

 

優しくて、物静かに本を読み

私も、本を読んでいると

「何を、読んでるの?」

と、聞かれたが、占いの本だった

ので、それには答えなかった。

 

「本は好き、いつでも読めるから」

「僕の本も、すんだら読めば良いよ」

本箱に、何冊かの本が入っていた。

それは、叔父さんのだったんだ。

 

私は、初めて叔父さんに相談した。

私が、人に相談することなど

無いと、思っていたのに。

 

畑に、下肥えを初めて運んだとき

誰かに見られたらしく、学校で

広められた。

それは本当のことだし、手伝い

だから、別に悪いことだとは思って

いないが、人が何をしていようと

構わないと思うが・・・

 

叔父さんは、私に聞いた。

「恥ずかしかったんじゃない、

 嫌だったら、お父さんに言えば

 いいけど、言いにくかった僕が

 言ってもいいよ。」

私は、恥ずかしかったのかな?

確かに、みんなに言われるのは

嫌だったけど・・・

「大丈夫、本当のことだし、

 いつか、みんなも忘れるよ。」

 

私は、他の誰にも、この事を

話してはいないが、それ以降

その手伝いは、さされてはいない。

 

ふた月ほどすぎた頃、

叔父さんは、いなくなった。

忘れた頃に、私に葉書が届いた。

「あなたは、あなたの思うように

生きて、あなたは、間違っては

いない。」

 

私は、母に叔父のことを聞いた。

「今、何処にいるの?」

「ひろっさんは、結核だったから

 療養所に入ったの、この前、

 肺炎になって治療してたんだけど、

 ダメだったの。」

「死んだの、本当に死んじゃったの?」

母は、頷いた。

信じられない気持ちと、やっぱり

と、思う気持ちがあった。

叔父さんがいなくなったとき、私は

タロットをしていた。

 

その時に、死神のカードが出てきた。

信じたくなくて、カードの意味を調べ

「休息が必要だ!」の意味だと思い

込もうとした。

 

叔父は、心配させたくなくて、私たち

には何も言わずに、出ていった。

叔父が読んでいた本が、本立ての中に

あった。

 

治らない病気だと、わかっている人が、

どうやって、たちむかっていくか?

叔父さんは知ってたんだ。

自分が、あまり良くないってことに。

だから一度、家に帰って来たんだ。

 

私は、声を出さずに泣いた。

胸が苦しくて、悲しかった。

だけど、今はきっと、元気になって

ると信じる。

 

叔父さんは、卒業したんだよね。

いつか、あったときに笑顔で、

葉書をありがとうって言うよ。

それまで、さようなら。

高校、何処に行くの?

高校を何処ににするか?

学費が安い

電車に乗らない

自転車で行ける

料理ができる

この時点で、二校に絞られた。

 

家に近い

兄が行っている(実は、以前住んでいた田畑

        のある家に近い)

家の手伝いができる(兄が就職する)

授業中に、料理して食べられる

これで決まった。

 

家政科のある高校にしよう。

であれば、今のままでも大丈夫だろうと思った。

親にも誰にも相談はせず、ここに行くとだけ伝えた。

 

試験を受け、発砲の日に先生から連絡が入った。

「合格してるから、書類を取りに行って来て。」

高校から書類をもらい、学校に行くと先生が、

予想以上に喜んでくれた。

 

「実は、学区外だったので、倍率がかなり高く

 四人合格に対して十五人、受験していたことが

 わかり、心配してた。」

と、言われた。

とにかく合格したので、良かった。

 

父の妹が、町でお菓子屋を営んでいた。

小学校の時に、一度泊りに行ったことがある。

年下の従妹と、遊んでいたとき。

「どうしても一緒に、まだ遊びたい。」

と言われて、一緒に家に行った。

 

お菓子屋の二階に、自宅があり、やさしいおじさん

(いとこの、お父さん)が迎えてくれた。

 

次の日、お店に来られるお客さんに、対応するのが

楽しくて、いとこと遊ぶのを忘れてた。

「お店の仕事は、面白い?」と、おじさんに聞かれ

「いっぱい、お菓子があっていいね。」と、答えた。

 

数年後、私が中学生の時に、そのおじさんが

幼い子供を三人残して、亡くなった。

心臓が悪かったらしい。

静かで、優しい人でした。

 

姉は、本屋に就職していたので、

家に本が大量に入り、読書し放題。

 

四月から兄は、就職して大阪に行きます。

 

 

 

田んぼが売れた。

駅の側の田んぼは、八月になると

い草の収穫時期になる。

暑い中、い草を刈り染料につけ干す。

 

小さいときは、ねこ車に載せ、

倒れそうななりながら運んでたのに、

今は、担いで運べるようになった。

 

夏休みの間の、田んぼ仕事は、

みんなで、することになっていたが

今年は、就職した姉の姿はない

 

次の年、兄は就職が決まったが、

県外の職場に行くことになった。

折角、兄のために買った車も

乗る人が、いなくなる。

 

正月に、みんなで神社に夜

参拝に行ったけど、これからも

何処かに、行けるのだろうか?

 

兄が、就職が決まった年に、

駅裏の土地が、大手の建築会社

によって広範囲に買われた。

 

父の妹の配偶者が、病気で

子供三人を残して、亡くなった。

父は、田んぼを売ったお金を

弟妹に、分けた。

本当は父が買ったのに、祖母の

気持ちを汲んだのだろう。

 

兄が、手伝えなくなることもあって

売る気になったのだろうか?

今は、機械でできる作業も多くなり

前ほど、手伝いをしなくても

良くなったので、部活に行ったり

友達の家に遊びにも行ける。

 

三年生になったとき、

働いている母の代わりに、夕食を

作るようになったが、

思たよりも好評だったので、

作るのが楽しくなってきた。

 

学校で、進学と就職の話が出

始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

心の友へ!

二年生になって、

クラスが変わって、席がきまった。

 

隣の席と後ろの席の男子は、

仲が良いらしく。

授業中も話していて、私まで

巻き込まれることもある。

 

そのうち、暗号・パズルクイズを

出すようになった。

私が、かなり考えたものを、

すっと、解かれるとショックだ。

そんなときに、N君が先生に

当てられた。

 

私は、何を質問されたのかも

わからなかったのに、

N君は、何もなかったかの様に

立ち上がって答えた。

 

すごい、尊敬。

今まで、一緒に話してたのに

何で、答えられるのだろう。

たぶん、頭が良いんだね。

それで、暗号もすぐ解けたんだ。

 

それからは、よく三人で話した。

いつか、自転車で日本一周を

したい。と言ってるのを聞いて、

私は行けないだろうな、と思って

少し、悲しかった。

 

「一緒に行く?」

「行けたらね。」

どうなるかわからないけど、そう

言ってくれたのは、嬉しかった。

そんな、たわいない話をしてる

うちに、一学期は終わった。

 

二学期になって、席替えがあった。

N君たちとは、離ればなれになって

私達は、以前ほと話さなくなった。

N君は、卒業したら転校する

みたいだと聞いて、

もう、会えなくなると思った。

 

「N君が好きなの?

「どうだろう、友達かな」

本当は、気にはなってた。

それから、よく、帰りが

一緒になった。

 

卒業のとき、サイン帳には

心の友へ、と書かれていた。

卒業して、N君は、私の友達と

文通を始めた。

一緒に帰ってた、友達だ。

 

彼等は、日本一周したのかな?

 

 

 

 

 

 

はじめまして、さようなら。

数日前から、知らない男の人が

家の中にいる。

昨日は、お兄ちゃんと竹の飛行機を

作っていた。

 

私は、触らせてもらえなかったが、

組み立てるのも、紙を張るのも

凄く、器用に出来上がった。

 

兄は、それを持って友達と

飛ばしに行った。

 

母に誰かを聞くと、

「父の弟で、大工さんをしていて、

 今まで、県外で働いていたけど、

 体調をくずし、帰ってきた。」

と、言われた。

 

優しくて、物静かに本を読み

私も、本を読んでいると

「何を、読んでるの?」

と、聞かれたが、占いの本だった

ので、それには答えなかった。

 

「本は好き、いつでも読めるから」

「僕の本も、すんだら読めば良いよ」

本箱に、何冊かの本が入っていた。

それは、叔父さんのだったんだ。

 

私は、初めて叔父さんに相談した。

私が、人に相談することなど

無いと、思っていたのに。

 

畑に、下肥えを初めて運んだとき

誰かに見られたらしく、学校で

広められた。

それは本当のことだし、手伝い

だから、別に悪いことだとは思って

いないが、人が何をしていようと

構わないと思うが・・・

 

叔父さんは、私に聞いた。

「恥ずかしかったんじゃない、

 嫌だったら、お父さんに言えば

 いいけど、言いにくかった僕が

 言ってもいいよ。」

私は、恥ずかしかったのかな?

確かに、みんなに言われるのは

嫌だったけど・・・

「大丈夫、本当のことだし、

 いつか、みんなも忘れるよ。」

 

私は、他の誰にも、この事を

話してはいないが、それ以降

その手伝いは、さされてはいない。

 

ふた月ほどすぎた頃、

叔父さんは、いなくなった。

忘れた頃に、私に葉書が届いた。

「あなたは、あなたの思うように

生きて、あなたは、間違っては

いない。」

 

私は、母に叔父のことを聞いた。

「今、何処にいるの?」

「ひろっさんは、結核だったから

 療養所に入ったの、この前、

 肺炎になって治療してたんだけど、

 ダメだったの。」

「死んだの、本当に死んじゃったの?」

母は、頷いた。

信じられない気持ちと、やっぱり

と、思う気持ちがあった。

叔父さんがいなくなったとき、私は

タロットをしていた。

 

その時に、死神のカードが出てきた。

信じたくなくて、カードの意味を調べ

「休息が必要だ!」の意味だと思い

込もうとした。

 

叔父は、心配させたくなくて、私たち

には何も言わずに、出ていった。

叔父が読んでいた本が、本立ての中に

あった。

 

治らない病気だと、わかっている人が、

どうやって、たちむかっていくか?

叔父さんは知ってたんだ。

自分が、あまり良くないってことに。

だから一度、家に帰って来たんだ。

 

私は、声を出さずに泣いた。

胸が苦しくて、悲しかった。

だけど、今はきっと、元気になって

ると信じる。

 

叔父さんは、卒業したんだよね。

いつか、あったときに笑顔で、

葉書をありがとうって言うよ。

それまで、さようなら。

 

 

 

クラスメート

線路を渡った所に、畑と田んぼがある。

野菜と米と畳の材料になるイ草を植えていた。

手伝いをしていたせいで、グループでする発表会の準備の

集まりに遅れた。

 

みんなに、どうして遅れたのかを伝えても、信じてくれなかった。

手伝いをしないと、学校に行けなくなるかもしれない。

との説明は信じられないのだろう。

私には、あたりまえのことだが、学校が一番と思える君たちは、

幸せだよ。

 

発表の時に、私は入れてくれなくて渡井のと伝えたら

そこまで、責める気はなかったらしく。

「早くしないと、遅くなるよ。」の誰かの言葉で、この話は

 終わった。

 

準備が終わって、家に帰ったら母が心配していた。

「遅れたんじゃない、大丈夫だった?」

「大丈夫だったよ。」としか言えないでしょ。

 

家の事情は、説明してもわかってもらえないことは分かった。

相談をされてれば、一緒に悩むが、私からの相談はしない。

誰かが泣いていたら、そっと傍に寄り添う。

誰かのことを、怒っている人のそばにはいかない。

噂話には、のらない。気になったら、直接本人に聞く。

 

私は、何を考えてるのかわからない、不思議な人と

思われていたようで、話し合いの時に、最後に意見を

聞かれることが多くなった。

 

学校の帰り道に、本屋があった。

いつもなら、寄ることもなかったのに、その日は

店先に並んだ本が気になった。

店の人に、後で買いに来るからと伝えて、急いで

家に帰り、小遣いを握りしめて家を飛び出した。

 

それが、タロット占いの本だった。