手かざし

母は、幼稚園の帰りに入信した家に 通うようになった。

息子の病気が良くなると、本当に 思っていたのだろうか?

 

兄がまだ、母のお腹にいたときに 町で占い師に声をかけられたらしい。 「お腹の子は男の子、死にそうになっ ても、ちゃんと育つし、役に立つよ。」

 

兄が生まれて数ヶ月たった時に、姉は 隣の子達とかくれんぼをしていて、 気がつくと、おくるみに包まれた弟が 川を流れて行くのを見付けて、父に 知らせに走った。 父は、流れていく息子を抱き上げて、 川から上がってきた。 発見が早かったので、大事には いたらなかったらしい。

それから、兄は母の側におかれ、 姉は、祖母や叔母たちと暮らすことに なったらしい。 ちょうど幼稚園に入る頃で、広い 田畑を開墾していた両親には、 幼稚園に行く時間もなかったようだ。

 

教祖様の家で、私は自然に祝詞を 覚え、手かざしをしていた。 ただし、それが本当にできていたのか どうかはわからない。

 

ある日、母は電車に乗り私を連れて、 知らない家を訪ねて行った。 兄の病気が、どうしてなったのか ご先祖様に聞くために、私に霊を 降ろして、聞き取ろうとしたらしい? しかし、そこの人に、 「この子には降ろせないよ、守られて いるから、あなたになら降ろせるけど 聞く人がいないでしょう。」 それを聞いて、母は、そのまま帰って きた。

もちろん、私は入信もしていません。 だけど、手かざしはできます。

 

妹は、住んでいる地区の幼稚園に 歩いて、近所の子供と通い、私は 小学校に入学しても、母に乗せて もらって通っていた。

 

妹が小学校に入るまでは、帰りも 母の自転車で帰ったが、三年生に なったときに、私と妹は二人で 五キロの道を帰ることになった。