父の入院

祖父が亡くなって、部屋が一つ空いた。

この部屋で、何を考えて生活してたのか?

たくさんの家族がいたのに、ほとんど

一人で過ごしていた。

私の中に、祖父の記憶はあまり無い。

 

家族は、祖母と父母と四人兄妹。

兄は、田んぼが忙しいときにしか

帰って来ないが、たまに会う兄に

父は、嬉しそうにしていた。

 

四月になって、私も就職した。

サービス業なので、土日は

休めない。

機械化になって、人手は以前ほど

いらなくなったが、手伝えない

ことは気になった。

 

田植えの始まる頃、父が体調を

崩した。

ほとんど、病気になった姿など

見たことがなかったので、

不安になって、話しかけた。

「どうしたの、大丈夫?」

「風邪でもひいたのかなぁ、

 背中が痛い。」

「医者に行ったら?

 田植えが済んだら、お母さんと

 旅行にでも行ってくれば良いが。」

「医者か!」

「お金は、出すから行ってくれば。」

「東京に、行ってくるかな。」

 

父は、医者嫌いだった。

まさか、東京にいる弟妹に会いに

行きたいと思っていたとは、

思わなかった。

 

次の日、父は病院に行った。

検査後、すぐに入院になった。

祖父が亡くなって、一年が

過ぎていた。