あなたのためなら。

中学生になった。

本来は一人で行動するが、相談されたり、頼まれれば受け入れ、

手助けはする。

 

小学校の時に遊んだことのある女の子が、「合唱部に入りたいんだけど

一緒に行ってくれない。」と言ってきた。

顧問の女の先生は、美人だが少し冷たい感じがするので、怖いらしい。

放課後、音楽教室に行くと、合唱部の生徒たちはいたが先生はまだ

来られていなかった。

 

「入部希望です。」と部長とおぼしき上級生に告げたいたときに、

先生が来られて、笑顔でよろしくと言われた。

「私ではなくて彼女です。」と伝えたが、

「まだ何処にも入ってないのなら、一緒に入部したら。」

と勧められたが、その気は無く、断るつもりでいたのに

すがるような、彼女の眼を見てしまい、うなずいてしまった。

 

数日が過ぎ、やっぱり違うと思い、彼女もなじんできたので

先生に辞めると告げたが、どうしてと問われた。

つい、窓の外にいた陸上部が目に入ったので、

「陸上部に入ります。」と言ってしまった。

 

家の手伝いがあるので、部活は入らないつもりだったのに

先生の手前、陸上部に入ることになった。

これで私の、図書室通いは当分なくなった。

 

陸上部に入ると、長距離をすることになった。

今まで、女子の長距離はなかったので、男子部員と

一緒に校外に出て、起伏のある場所を走らされた。

 

ここで厄介なことが一つ。

音楽の時間に、列ごとで指揮者と伴奏をする人を決め、

残りの人は合唱になる。

私の列の指揮者は合唱部の男子、伴奏のピアノは私。

私は、ピアノは習ってないし、同じ列にピアノが

上手な人もいるのに、なぜ?

 

その日、夢を見た。

広間に子供たちが座っている。

大人の人が、みんなに聞いた。

「これから、みんなは生まれるんだけど、自分で決めた

 試練のためには、邪魔をする人がいる。

 みんなは仲良しだけど、誰か彼女のために、邪魔を

 する役をしても良いと思う人はいるかい。」

「いやだよ、だって可哀そうだし、仲良しじゃ

 なくなっちゃうでしょ。」

「でも、その経験をしないと成長しないし、自分の目指す

 所に行くのに時間がかかるんだよ。」

その中で、一番おとなしい子が手を挙げた。

 

「わた〇〇ちゃん大好きだけど、ぜったい別れたくないけど、

 〇〇ちゃんのためになるのなら、私がしてもいいよ。」

その子は泣いていました。目にいっぱい涙をためてて、

ぬぐっても、ぬぐっても涙は流れていました。

〇〇ちゃんも、泣いていた。

 

私は胸が痛くなった。

これまでも、意地悪をされたことはある。

でも、その中には、私の成長のために、あえて

悪者になってくれた人もいたのかもしれない。

たしかに、そのお陰で成長できたこともある。

 

目が覚めると朝だった。

できないと決めつけないで、出来るだけのことをしてみよう

その日から、学校の休み時間にピアノを弾く練習をした。

少しは弾けるようになった。

陸上で走っているときに、帰宅する先生にあった。

 

ありがとうございましたの気持ちを込めて、

お辞儀をした。

音楽の先生は、小さく手を振ってくれた。

音楽の先生は年度末に、転任された。